皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか？

9月下旬パリにもどりました。例年9月末になると、そろそろ暖房が欲しくなりますが、今年は10月に入っても日中は20℃を越す秋晴れが続き、向いの修道院に繁る木々は緑の葉を未だにしっかり付けています。

ジャカルタやパリで日本大使を歴任された飯村豊氏の御執筆による『外務省は「伏魔殿」か』（芙蓉書房出版）を大変興味深く読みました。政治や外交について私は全く門外漢ですが、1972年以来ヨーロッパと日本の二重生活を続けて、東南アジアのコンサートも多く、北はノルウェー・トロンヘイムから南アフリカ・ケープタウンに到るオーケストラと聴衆に接してきましたので、日本の外から日本を見る姿勢は飯村氏と似通って「同感、同感」と手を叩きながらページを捲りました。

ウクライナ問題だけでも充分騒がしいのに加えて、イスラエルのパレスティナ問題が再燃しました。聖書の時代からの伝統ではありますが、ユダヤ系・アラブ系が多く混在するヨーロッパ各地ではテロ事件も関連発生して「対岸の火事」とは言っていられません。ニュースで凄惨な映像を見る度に、かって共に演奏旅行を行ったイスラエルやエジプト、アルジェリアのオーケストラを思い出して心が痛みます。私にとってオーケストラ演奏とは、作品からもたらされる感動をメンバーと分かち合うことに始まり、作曲者の意図を再現するべく密な協同作業を展開することなのです。

一日一日と日が短くなります。ご体調を崩されぬよう、御自愛下さい。

パリにて、2023年10月

矢崎　彦太郎